20年くらい前の新人の頃、先輩から教わった粗加工の方法は。
- 刃物は仕上げで使って切れなくなったモノを粗加工用へ下す
- なるべく大径の刃物でガッツリ切り込む
- 新品刃物使うならハイスのラフィング
はじめの頃はこれらのアドバイスを信じていましたし、何の疑問も持ちませんでした。
比較的小さい(重量5kg以下)ワークがメインだったこともあり、チップ交換式の工具はほとんどありませんでした。
この教え、今では完全否定派、粗加工こそよく切れる刃物を使うべきです。
粗加工は高効率を求められるので、まずスピードが求められます。摩耗したエンドミルやハイスのラフィングでは周速を上げられません。
結果、回転数を下げることになり送りも下がります。
これらの刃物で周速を上げると、刃物の摩耗のスピードは加速、摩擦により発生する熱量がハンパ無いです。
通常は削り取られた切粉によりワークの熱を奪い冷却を促進しますが、ワークに残る熱が勝ります。
熱による刃物のダメージ
刃先のコーティングはすでに摩耗しているので、刃物の母材は高温に耐えられなく摩耗が高速で進みます
熱によるワークのダメージ
ある程度の熱は切粉の分断を促進しますが、それ以上の熱はワークにもダメージが残ります。
具体的なワークへのダメージは、最も多いのは「そり」と「加工硬化」。
特に薄肉部は熱をワークに拡散できず、局所的に熱がたまります。そのため熱処理された状態になり、焼き入れや焼き戻しを行ったのに近い状態になることがあります。
切粉の温度
何度が最適な温度なのか、これは刃物メーカーが推奨していると思いますでそちらを参照してください。
実際切削中の温度は測定は困難です、高効率タイプの刃物はエアブローを推奨してる場合が多いので切粉の色で判断できます。
クーラントを利用した切削では切粉の色は殆ど変わりません。
エアブローで切削した場合、切削速度150~200m/minでは濃い青です、このあたりがベストです。
温度にして約700~750℃、これより低いと紫、高いと青が薄くなります。
大概のエンドミルのコーティングの酸化開始温度は1000℃程度なので、切粉の色で刃先摩耗・切削条件の加減を判断出来ます。
話をもどして、効率よく粗加工するために適した刃物は次の4つ。
- ネジレ角40度以上
- 容量の多いチップポケット
- 突っ込みが可能なエンド形状
- 剛性とチップポケット容量のバランスに優れた3枚刃
個人的に日進工具信者なのでオススメするのは
無限コーティングパワーZエンドミルMSZ345
片手で持てるサイズ5kg以下の比較的軽量ワーク、3次元加工バリバリ50%以上切粉にしてしまう場合の粗加工に最適です。
あえて小径で粗加工することで、段階的に刃径落として追い込みすることもなく、仕上げ代も均一にできるので精度・形状が出しやすくトータル加工時間は短縮できます。
例えば被削材S45C、MSZ345φ10の場合、切削速度90m/min(回転数3000min-1)側面切削0.3D(3mm)Z切り込み1.5D(15mm)の場合、送りはF900が推奨です、僕はエアブローでF1200まで上げてます。
もちろんワークの形状によるので高送りカッターの方が効率良い時もあります、ボクが愛用する高送りカッターはTungalloyのDofeedです。
最近では高効率タイプの刃物や、5軸対応のバレル工具など、高効率化に特化したモノがふえていました、我々加工者も頻繁にノウハウをアップデートする必要があり情報収集が欠かせません。
新型コロナウイルス感染防止のため、JIMTOF2020は残念ながら中止となりました。
こういった展示会は新技術や新製品を直に体験でき、効率よくメーカーと対話できるチャンスなので、中止は本当に残念です。