エンドミルで切削する場合、切削送りする方向で特性が違います。
どちらでも良いことは無く、
精度を重視するか、刃先摩耗を抑えて工具コストを抑えるか、
達成したい内容で削り方が変わってきます、
今回は基本的なエンドミルのアップカットとダウンカットの違いを説明します。
ダウンカットとアップカッット
回転方向に対して送る方向でダウンカットかアップカットかが決まります
アップカット
- 刃先の切込みがゼロからスタートし次第に厚くなる、スリップが多く切削温度が高いため刃先が摩耗しやすい
- 切込みが微小であれば仕上げ面は良好
- 刃先は被削材に対して食い込む方向に作用するので削りすぎる
ダウンカット
- 刃先の切込みは次第にうすくなり、スリップが無いため、切削温度は低く摩耗は少ない
- ビビりが少ない
- 刃先摩耗が少なく工具寿命が長い
- 刃先は被削材に対してニゲる方向に作用するため、工具先端部は削り残しが生じる
刃物の送り方向を分かりやすく動画にしました
アップカットとダウンカットの使い分け
アップ・ダウン、どちらを選ぶか?
基本はダウンカット
刃先摩耗が緩やかで安定した切削が可能なダウンカットがデフォルトです。
では、アップカットが有効な場合はどんなシチュエーションでしょう。。
工具径の4倍~5倍ある立壁でタオレを0.01以内に抑える場合は、
ダウンカットで仕上げ、そのままアップカットで戻してやるとバシっと決まります。
刃先に局所的な摩耗が無いのが条件です。
他には、
嵌め合い穴をエンドミルで仕上げる場合、ダウンカットで仕上げると穴の下(底)の寸法が出にくいことがあります。
嵌め合い穴H7とか、も深いと底近くが-0.01ぐらいするときがありますよね。
そんなときはダウンカットで仕上げてアップカットでゼロカットする。
ダウンカットは工具先端部がニゲやすいので、ニゲた部分をアップカットで仕上げてやります。
先端部のニゲを抑えるため、工具突き出しはできる限り短くチャッキングします。
工具の突き出し量とニゲについてはこちらの記事にもう少し詳しく書いてます。
※ゼロカット:一度切削した箇所を再度同じ刃物を通す加工
たまに、穴の仕上げをダウンカットで何度もゼロカットする新人がいますが、
意味がありません。
刃先が無駄にワークに擦られ摩耗を促進するだけです。
まとめ
- 刃先摩耗を抑えて安定して加工する場合、基本はダウンカット
- キビシい寸法仕上げは微小仕上げ代でアップカット
- アップカットは刃先摩耗が早い
基本はダウンカット、加工内容・精度によって使い分が必要です。
使い分けで工具費削減、加工時間削減できます。
工具摩耗の抑制は工具費用削減だけではなく、
寸法管理の手間
工具交換の手間
工具交換後の寸法調整の手間
等メリットが多いです。
工具の使い方、プログラムの組み方次第で出来上がる品質は大きく変わります。
工具カタログなどには載っていない使い方ですが、基本的な方法です。
寸法が出しにくいな、というときはアップカットを使ってみましょう。