ステンレスは錆びにくい金属として広く知られていますが、磁石につくものとつかないものがあることをご存じでしょうか?この記事では、ステンレスの種類や特徴を解説し、特にSUS材について詳しく紹介します。磁石との関係性についても触れながら、選定時のポイントを明らかにしていきます。
ステンレスの基礎知識
ステンレス鋼は、鉄(Fe)にクロム(Cr)を10.5%以上含有した合金です。クロムは金属表面に不動態被膜と呼ばれる非常に薄い酸化被膜を形成し、この被膜が錆びにくさの要因となっています。さらに、ニッケル(Ni)やモリブデン(Mo)を添加することで、耐食性や機械的性質を調整できます。
ステンレスは主に次の4つの系統に分類されます:
- オーステナイト系
- フェライト系
- マルテンサイト系
- 析出硬化系
それぞれの系統の特徴と磁性について詳しく見ていきましょう。
ステンレスと磁性の関係
ステンレスの磁性は、結晶構造によって大きく異なります。
オーステナイト系ステンレス
- 主な種類:SUS304、SUS316
- 特徴:
- 耐食性が非常に高い。
- 機械的強度も高く、加工性に優れる。
- 磁石にほぼつかない(非磁性)。
- 磁性の理由: オーステナイト系はFCC(面心立方構造)という結晶構造を持つため、常温では磁性を示しません。ただし、冷間加工などで結晶構造が変化すると、弱い磁性を帯びることがあります。
フェライト系ステンレス
- 主な種類:SUS430、SUS410L
- 特徴:
- 耐食性はオーステナイト系よりやや劣るが、コストが低い。
- 熱膨張率が低く、耐熱性に優れる。
- 磁石に強くつく(強磁性)。
- 磁性の理由: フェライト系はBCC(体心立方構造)を持ち、この構造は磁性を帯びる性質があります。
マルテンサイト系ステンレス
- 主な種類:SUS420、SUS440C
- 特徴:
- 耐摩耗性と硬度が高い。
- 刃物や工具などの用途に適する。
- 磁石に強くつく(強磁性)。
- 磁性の理由: マルテンサイト系もBCC構造を持ち、磁性を示します。
析出硬化系ステンレス
- 主な種類:SUS630(17-4PH)
- 特徴:
- 耐食性と強度のバランスに優れる。
- 主に航空機や化学プラントの部品に使用される。
- 磁性の有無は組成による。
- 磁性の理由: この系統の磁性は添加元素や処理方法により異なります。
よく使うSUS材の種類と特徴
SUS304
- 特徴:
- ステンレス鋼の中で最も広く使われている。
- 非磁性で、耐食性や加工性が優れる。
- 家庭用シンクや調理器具、建築材料などに使用。
SUS316
- 特徴:
- モリブデンを含むことで耐食性がさらに向上。
- 海水や化学薬品への耐性が高い。
- 医療機器や化学プラントで使用。
SUS430
- 特徴:
- フェライト系の代表的な材料。
- 耐食性はSUS304より劣るが、コストが安い。
- キッチンパネルや家電製品の背面カバーなどに使用。
- 磁石に強くつく。
SUS420
- 特徴:
- 高い硬度を持つマルテンサイト系。
- 刃物やバルブ部品に適する。
- 熱処理で硬化し、磁性を示す。
SUS440C
- 特徴:
- ステンレス鋼の中で最も硬度が高い。
- 耐摩耗性が要求される用途に使用。
- 磁石につくため、精密部品やベアリングで採用。
ステンレス選定時のポイント
- 用途に応じた耐食性の確認
- 水分や塩分にさらされる環境では、耐食性の高いSUS316を選択。
- 磁性の有無を考慮
- 磁石につく必要がある場合は、SUS430やSUS420を選ぶ。
- コストパフォーマンス
- 高性能な材料はコストが高いため、必要な特性に見合った材質を選ぶ。
- 加工性のチェック
- 曲げ加工や溶接が必要な場合は、加工性に優れるオーステナイト系を。
まとめ
ステンレス鋼には様々な種類があり、磁石につくかどうかは結晶構造に依存します。SUS304やSUS316は非磁性で耐食性に優れ、SUS430やSUS420は磁石につく性質を持っています。用途や環境に応じて最適な材質を選定することが、製品の性能や耐久性を左右します。
今回紹介した知識を活用して、適切なステンレス材料を選び、製品の品質向上に役立ててください。