製造現場での効率化と品質管理を両立するには、再加工処理とNG判定の仕組みが役立ちます。これらは特に、小ロット多品種生産で不良率を最小限に抑えたい場合に重要です。本記事では、再加工の自動化とNG判定の実現方法について、マクロプログラムの具体例を交えて解説します。
1. 再加工の重要性とメリット
再加工は、不良品の廃棄を減らし、製品歩留まりを向上させる重要な工程です。以下のようなメリットがあります:
- 材料ロスの削減:寸法不良品を再加工し、製品として利用可能にする
- 手戻り時間の短縮:自動再加工により手動調整を減らす
- 品質管理の強化:NG品をリアルタイムで識別し、次の工程に進ませない
2. マクロプログラムによる再加工の流れ
再加工をマクロプログラムで行う際の基本的な流れは次の通りです:
- 寸法測定(プローブまたは他の方法)
- NG判定(公差範囲内かどうか)
- 再加工の実施(寸法補正や追加切削)
これをNCプログラムに組み込むことで、工程全体を自動化できます。
3. NG判定と再加工のプログラム例
プログラム例:再加工とNG判定のマクロ
以下は、Z方向の仕上げ加工でNG判定を行い、再加工を自動的に実行するマクロプログラムの例です:
O1000 (再加工とNG判定プログラム)
#100 = 0.02 (公差の上限)
#101 = -0.02 (公差の下限)
#102 = 5.0 (目標寸法)
#103 = 0.0 (測定値初期化)
N1 G21 G17 G90 (ミリ単位、XY平面、絶対座標)
N2 T99 M06 (プローブ工具選択)
N3 G54 (ワーク座標系の設定)
N4 G00 X20.0 Y20.0 Z5.0 (測定開始位置へ移動)
N5 G65 P9810 Z[#102] (プローブで寸法測定)
N6 #103 = #5063 (測定結果を変数に格納)
N7 IF [#103 LE [#102 + #100]] GOTO 10 (公差範囲内チェック)
N8 IF [#103 GE [#102 + #101]] GOTO 20
N10 (公差範囲内なら終了)
G00 Z5.0
M30
N20 (再加工処理)
#104 = [#103 - #102] (補正量計算)
G10 L2 P1 Z[#104] (ワーク座標系を補正)
M98 P2000 (再加工サブルーチン呼び出し)
GOTO 5 (再測定へ)
N99 (NG判定処理)
M00 (プログラム停止:NG品)
プログラムの動作説明
- 寸法測定:G65でプローブ測定を行い、結果をシステム変数から取得します(#5063がZ寸法)。
- 公差判定:測定結果が公差範囲内(#102±#100~#101)かどうかをIF文で判定します。
- 再加工:寸法差(#104)に基づいて、ワーク座標系を補正し、再加工を実行します。
- NG判定:再加工後も公差範囲外の場合はプログラムを停止し、NG品として処理します。
4. 活用時の注意点
- 測定精度の確認
- プローブや測定機器の精度を定期的に点検し、信頼性を確保する必要があります。
- 再加工の限界
- 再加工で製品寸法が満たされない場合、NG品として判定する条件を明確に設定しましょう。
- ループ処理の制限
- 再加工回数が多すぎると製品や工具にダメージを与える可能性があるため、再加工回数の上限を設定することが重要です。
#105 = 0 (再加工回数初期化)
N25 IF [#105 GE 3] GOTO 99 (再加工3回でNG判定)
#105 = [#105 + 1]
まとめ
再加工とNG判定をマクロプログラムで自動化することで、加工精度と作業効率を大幅に向上させることができます。本記事の例を参考に、現場に応じたプログラムを構築してみてください。
次回予告:次回は、加工工程全体を効率化するための「加工履歴の管理とトレーサビリティ」をテーマにお届けします。