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旋盤加工:S45CにおけるノーズRが仕上げ面粗さに与える影響と仕上げ代、クーラントの有無の効果

NC旋盤
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旋盤加工では、被削材や工具形状に応じた条件設定が仕上げ面の品質に大きく影響します。S45C(機械構造用炭素鋼)は加工性が良好なため、適切な仕上げ代(仕上げしろ)と切削条件を設定すれば、高品質な仕上げが可能です。本記事では、ノーズRが仕上げ面粗さに及ぼす影響、適切な仕上げ代の設定方法、およびクーラントの有無による加工結果の違いについて詳しく解説します。


1. ノーズRと仕上げ面粗さの関係

ノーズR(インサートチップ先端半径)は、加工面に残る波形(リッジ)の大きさを左右し、仕上げ面粗さを決定づける重要な要因です。

(1) ノーズRの大きさと仕上げ面の特徴

  • ノーズRが大きい場合(例:0.8~1.2 mm)
    • 切削負荷が分散され、振動が抑えられるため、滑らかな仕上げ面が得られます。
    • 加工面の波形が小さくなり、仕上げ面粗さ(RzやRa)が小さくなる。
    • ただし、切削抵抗が増すため、剛性の低い機械では振動が発生する可能性があります。
  • ノーズRが小さい場合(例:0.2~0.4 mm)
    • 工具が鋭利で、切削抵抗が低く、加工が軽快になります。
    • しかし、ノーズRが小さいため、加工面に細かい波形(リッジ)が残りやすく、粗さが大きくなる傾向があります。

(2) 送り量とノーズRによる仕上げ面粗さの計算

仕上げ面粗さ RaR_aRa​ は、次の式で概算できます:Ra=f28⋅rR_a = \frac{f^2}{8 \cdot r}Ra​=8⋅rf2​

  • fff:送り量(mm/rev)
  • rrr:ノーズR(mm)

例:S45Cを加工する場合

  • ノーズR = 0.8 mm、送り量 = 0.1 mm/revRa≈0.128⋅0.8=0.00156 mmR_a \approx \frac{0.1^2}{8 \cdot 0.8} = 0.00156 \, \text{mm}Ra​≈8⋅0.80.12​=0.00156mm
  • ノーズR = 0.4 mm、送り量 = 0.2 mm/revRa≈0.228⋅0.4=0.0125 mmR_a \approx \frac{0.2^2}{8 \cdot 0.4} = 0.0125 \, \text{mm}Ra​≈8⋅0.40.22​=0.0125mm

ノーズRが大きいほど、送り量を増やしても滑らかな仕上げ面が得られます。


2. 仕上げ代の設定と影響

**仕上げ代(仕上げしろ)**とは、荒加工の後に残しておく加工余剰量を指し、最終的な仕上げ面精度や寸法精度に影響します。

(1) 仕上げ代の目安

S45Cの旋盤加工での一般的な仕上げ代は以下の通りです:

  • 外径加工:0.1~0.3 mm
  • 内径加工:0.15~0.25 mm
  • 面加工:0.05~0.15 mm

仕上げ代が適切でない場合の影響:

  • 大きすぎる場合:加工時間が増え、工具摩耗が進む。切削抵抗の増加による振動や寸法不良が発生する可能性がある。
  • 小さすぎる場合:荒加工時の加工面や加工硬化層が仕上げ面に残り、精度や表面粗さに悪影響を与える。

(2) ノーズRとの相関

  • ノーズRが大きいほど、仕上げ代も大きめに設定可能(工具の耐久性と切削負荷分散のため)。
  • ノーズRが小さい場合、仕上げ代を小さく設定し、軽切削を行うことで工具摩耗や振動を抑える。

3. クーラントの有無が仕上げ面に及ぼす影響

クーラントは、切削温度を低減し、工具寿命や仕上げ面粗さの改善に寄与します。

(1) クーラントありの効果

  • 切削熱の抑制により、加工硬化を防ぐ。
  • 切りくずが加工面に再付着するのを防ぎ、仕上げ面の傷が減少
  • 工具寿命が延び、安定した加工条件を維持できる。

(2) クーラントなしの影響

  • 切削熱が蓄積し、工具の摩耗が進む。
  • 特にS45Cでは加工硬化が発生しやすく、仕上げ面が荒れる。
  • 切りくずの処理が難しくなり、加工面に傷が付きやすい。

仕上げ加工ではクーラント使用が推奨されますが、ドライ加工を行う場合は、低切削速度や微細な切り込みで熱の影響を抑えることが重要です。


4. 加工条件の一例

S45Cの旋盤仕上げ加工(実際の条件例)

ノーズR送り量 (mm/rev)切削速度 (m/min)仕上げ代 (mm)クーラント仕上げ面粗さ (Ra, mm)
0.80.11500.2使用0.002
0.40.11500.15使用0.006
0.80.21200.2未使用0.004
0.40.21200.1未使用0.010

5. まとめ

  • ノーズRが大きいほど仕上げ面は滑らかになりやすいが、仕上げ代や切削条件に注意が必要。
  • 適切な仕上げ代の設定は、加工効率と品質の両立に重要。
  • クーラントの使用は、S45Cの加工硬化を防ぎ、工具寿命を延ばし、仕上げ面を安定させる。

加工条件の最適化と仕上げ代の正確な設定により、旋盤加工での品質向上を目指しましょう!

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