5軸マシニングセンターは、複雑な形状や高精度が求められるチタン加工で大きな威力を発揮します。この記事では、5軸加工の具体的な応用例と、加工時に発生するトラブルとその対策について詳しく解説します。
1. 5軸マシニングセンターを活用したチタン加工の応用例
(1) 航空機部品(インペラやブレード)の加工
特徴: 航空機エンジンに使用されるインペラやブレードは、複雑な3次元形状と高い耐久性が求められます。
- 使用設備: 5軸マシニングセンター(高剛性モデル)。
- 加工内容: 複雑な曲面形状を高精度で削り出し。
- 工具選定: 球面エンドミル(TiAlNコーティング)を使用。
加工条件:
- 切削速度: 25~30 m/min
- 送り量: 0.1~0.2 mm/tooth
- 切込み深さ: 3~5 mm
ポイント:
- 同時5軸加工により、ワンチャッキングで加工完了。工具の突き出し長を最小限に抑え、振動や加工精度の低下を防止。
- 高圧クーラントを使用し、加工熱を抑制。
成果: 仕上げ加工の段取り回数を従来の2/3に削減。表面粗さ1.2Ra以下を達成。
(2) 医療機器用の骨接合プレートの加工
特徴: 人体に埋め込むプレートは、生体適合性や精密さが重要。チタン材の特性を活かしながら、薄肉加工と滑らかな表面仕上げを行います。
- 使用設備: 5軸マシニングセンター(高速加工対応機)。
- 加工内容: 薄肉部の形状加工と穴あけ加工。
- 工具選定: 小径ボールエンドミル。
加工条件:
- 切削速度: 20~25 m/min
- 送り量: 0.05~0.1 mm/tooth
- 切込み深さ: 1~2 mm
ポイント:
- 薄肉加工での振動防止のため、高剛性治具を使用。
- 加工途中での温度上昇を防ぐため、間欠的に加工を行い、部品に負担をかけない。
成果: 0.01mm以内の寸法公差を実現。医療基準に適合する表面仕上げを達成。
2. 5軸マシニングセンターでのトラブルと対策
(1) トラブル: 工具の早期摩耗
原因:
- 高速切削に伴う工具の過熱。
- 切削速度や送り量が不適切。
対策:
- 切削条件を見直す: 切削速度や送り量を下げ、摩耗を抑える。
- 工具のコーティングを変更: TiAlNやAlTiNコーティングを検討。
- 冷却を強化: 高圧クーラントやミストクーラントを併用。
(2) トラブル: 振動による加工精度の低下
原因:
- 工具の突き出し長が長すぎる。
- 切削条件が高すぎる。
対策:
- 工具の突き出し長を短く: 工具ホルダーの選定を見直し、剛性を向上させる。
- 低速切削を実施: 切削速度と送り量を低めに設定。
- 治具を強化: 部品の固定を確実に行い、振動を抑制。
(3) トラブル: 加工後の寸法精度が不安定
原因:
- チタンのばね戻りや加工熱の影響。
- 切りくずの排出不良。
対策:
- 切りくずの排出を改善: 高圧クーラントやエアブローを利用し、加工エリアを常に清潔に保つ。
- 荒加工と仕上げ加工を分ける: 荒加工後に部品を冷却し、ばね戻りを抑える。
- 寸法計測を頻繁に実施: 加工中に寸法を確認し、微調整を行う。
3. 5軸マシニングセンターの導入メリット
5軸マシニングセンターを活用することで、以下のようなメリットが得られます:
- 加工の一体化: 部品の取り付け回数が減少し、段取り工数が削減。
- 高精度加工: 工具の角度制御が可能なため、複雑形状でも寸法精度が向上。
- コスト削減: ワンチャッキングでの加工により、工具摩耗や材料のロスを最小化。
4. まとめ
5軸マシニングセンターは、チタン加工において非常に効果的なツールです。ただし、特有の加工条件や問題点を考慮し、最適な設備と工具を選択することが成功への鍵となります。
トラブルが発生した場合は、今回ご紹介した対策を参考に、条件を一つずつ見直してください。次回は、最新のCAD/CAM技術を活用した5軸加工のプログラム作成について解説します!
この記事が、5軸マシニングセンターを活用したチタン加工の現場で役立つことを願っています!