NC旋盤で高精度な加工を行うためには、機械を安定した状態に保つことが重要です。その第一歩が暖気運転です。この記事では、暖気運転の目的や具体的な手順を紹介し、効率的に暖気運転を行うためのサンプルマクロプログラムもご提案します。
暖気運転の目的
- 加工精度の安定化
機械が冷えている状態で加工を開始すると、主軸や送り軸の温度変化による膨張・収縮で寸法誤差が生じます。暖気運転を行うことで、温度を安定させ、加工精度を向上させます。 - 機械の摩耗防止
潤滑油を各部に行き渡らせることで、摩耗やトラブルのリスクを軽減します。 - 安定した油圧・エア圧の確保
機械が一定温度に達することで、油圧やエア圧が安定し、スムーズな動作が可能になります。
暖気運転の具体的な方法
1. 主軸の回転運動
主軸を段階的に回転させます。以下のような流れがおすすめです:
- 初期回転: 500rpmで5分。
- 中間回転: 1500rpmで5分。
- 最大回転: 実際の加工に近い回転数で10分。
2. 送り軸の移動運動
X軸やZ軸など、機械の全軸を動かします。以下の設定を参考にしてください:
- 低速運動: 軸を最大移動範囲の50%程度動かし、速度は500mm/min。
- 中速運動: 軸をフルストロークで動かし、速度は1500mm/min。
3. クーラントの循環
クーラントを循環させ、加工中の熱を均一にする準備をします。
サンプルマクロプログラム
以下は、NC旋盤で暖気運転を自動化するためのサンプルマクロプログラムです。加工開始前に実行することで、暖気運転を効率化できます。
プログラム例
O9000 (暖気運転プログラム)
(MAIN PROGRAM START)
#1 = 500 (初期回転数)
#2 = 2000 (最大回転数)
#3 = 100 (回転増加ステップ)
#4 = 5 (各回転数での運転時間:分)
N10 G28 U0 W0 (原点復帰)
M03 S#1 (主軸回転開始)
WHILE [#1 LE #2] DO 1
(主軸回転中)
G04 P[#4 * 60] (指定時間回転)
#1 = [#1 + #3] (回転数を増加)
M03 S#1 (回転数を更新)
END 1
M05 (主軸停止)
G91 G00 X10 Z10 (送り軸移動開始)
(送り軸の往復運動)
N20 G01 X-10 Z-10 F500
G01 X10 Z10 F500
G04 P3 (3秒停止)
M30 (プログラム終了)
プログラムの説明
- 変数設定: 主軸回転数や運転時間を設定できます。
- WHILE文: 主軸回転を段階的に上げながら時間を管理します。
- 送り軸運動: 加工範囲を軽く動かし、油膜を均一化します。
まとめ
暖気運転は、NC旋盤の加工精度向上や機械寿命の延長に欠かせません。サンプルプログラムを活用することで、自動化と効率化が実現できます。この記事を参考に、ぜひご自身の工場や作業環境に適した方法を見つけてみてください!