NC(Numerical Control)プログラムは、加工機械を制御する指示を与えるためのコードです。これを学ぶことで、CNC工作機械を効率的に活用できます。本記事では、NCプログラムの基本から、工具長補正・径補正の考え方と使用方法まで、初心者向けにわかりやすく解説します。
1. NCプログラムとは?
NCプログラムは、数値とコマンドで構成された指示書です。これにより、切削工具や工作機械の動きを制御します。代表的なNCコードには以下のような種類があります。
- Gコード(動作コマンド)
機械の動きを指示するコード。例:G0
(高速移動)G1
(直線補間)G2
(円弧補間:時計回り)G3
(円弧補間:反時計回り)
- Mコード(補助機能)
主軸の回転開始/停止、クーラントのON/OFFなどを指示します。例:M3
(主軸正転)M8
(クーラントON)M30
(プログラム終了)
- その他のコード
F
(送り速度)S
(主軸回転速度)T
(工具番号選択)
2. NCプログラムの基本構成
NCプログラムは、以下の基本的な要素で構成されます。
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O1234 (プログラム番号)
N10 G21 (単位設定:ミリメートル)
N20 G17 G90 G40 (平面選択、絶対座標、工具補正解除)
N30 T1 M6 (工具選択・交換)
N40 G0 G54 X0 Y0 Z5.0 (ワーク座標系、初期位置設定)
N50 S1000 M3 (主軸回転開始)
N60 G43 H1 Z3.0 (工具長補正適用)
N70 G1 Z-5.0 F100 (加工開始位置)
N80 G1 X50 Y50 (直線加工)
N90 G0 Z5.0 (退避)
N100 M30 (プログラム終了)
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%
:プログラム開始/終了を示す記号。N
:行番号(任意)。G
/M
コード:動作指令や補助機能を指定。
3. 工具長補正(G43/G44)
工具長補正とは、工具の長さを考慮し、正確なZ軸位置を計算する機能です。工作機械のテーブルと工具先端の距離が変わっても、補正値を用いて正しい加工が可能になります。
- 設定手順
- 工具ごとの長さを測定し、機械のツールオフセットテーブルに登録します。
- プログラムで工具番号に対応する補正値を指定します。例:
H1
は1番の工具の補正値を使用。
- 使用例
T1 M6 (工具1を選択)
G43 H1 Z10.0 (工具長補正適用、Z軸位置を補正)
- 補正方向
G43
:工具長を加算(一般的)。G44
:工具長を減算(あまり使用しない)。
4. 径補正(G41/G42)
径補正は、工具の直径を考慮して、加工パスを補正する機能です。特に仕上げ加工や内外の輪郭加工で重要です。
- 設定手順
- 使用する工具の直径をツールオフセットテーブルに登録します。
- プログラムで適切な補正方向(G41/G42)を指定します。
- 補正方向
G41
:工具中心を左に補正(左オフセット、通常内側加工)。G42
:工具中心を右に補正(右オフセット、通常外側加工)。
- 使用例
G17 G90 G40 (XY平面選択、絶対座標、径補正解除)
T2 M6 (工具2を選択)
G1 X0 Y0 (開始位置)
G42 D2 X50 Y50 (工具径補正適用、工具2の補正値を使用)
G1 X100 Y100 (加工)
G40 (径補正解除)
- 注意点
工具径補正を有効化(G41/G42)する際は、必ず直線移動を含めて補正開始点を設定する必要があります。補正解除(G40)も同様です。
5. 初心者向けヒント
- シミュレーションを活用
実機加工の前に、シミュレーションソフトでプログラムを確認しましょう。エラー防止に役立ちます。 - 小さいステップで実行
初めてのプログラムは短い動作範囲で確認し、少しずつ拡張していきましょう。 - コメントを活用
プログラム中に(コメント)
を記載すると、内容を把握しやすくなります。 - Gコード一覧表を手元に置く
必要なコードをすぐ参照できるよう、一覧表を準備しておきましょう。
6. 実践例:円形輪郭加工プログラム
最後に、工具長補正・径補正を活用した簡単な円形加工のプログラム例を示します。
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O0002 (円形加工例)
G21 G17 G90 G40 (ミリ単位、XY平面、絶対座標、径補正解除)
T3 M6 (工具3を選択)
G43 H3 Z5.0 (工具長補正適用)
S1500 M3 (主軸回転)
G0 X0 Y-50 (円加工開始位置)
G42 D3 (径補正右適用)
G2 I0 J50 (円弧加工:中心(X0, Y0)、半径50)
G40 (径補正解除)
G0 Z5.0 (退避)
M30 (プログラム終了)
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7. まとめ
NCプログラムは、初めは複雑に感じるかもしれませんが、基本を押さえれば効率的な加工が可能です。工具長補正や径補正を活用することで、さらに精度の高い加工が実現します。ぜひ、少しずつプログラムを組み立てながら、実践を通じて習得していきましょう!