シリーズ最終回では、さらに高度なマクロプログラムを用いた効率化テクニックを解説します。本記事では、特に以下の内容を中心に実践的な活用例を紹介します。
- 複雑な加工工程の自動化。
- 可変データを活用したプログラムの汎用性向上。
- トラブル対応を支援するマクロプログラム。
1. 複雑な加工工程の自動化:多段階深さ切削マクロ
深穴加工やポケット加工では、一度に加工すると工具負荷が大きくなり、破損のリスクがあります。そこで、複数段階で加工を行うマクロを作成します。
サンプルプログラム
#100 = 0.0    (開始深さ)
#101 = -50.0  (最終深さ)
#102 = 5.0    (1回の切込み量)
#103 = #100   (現在の加工深さ)
WHILE[#103 GT #101] DO1
  G90 G0 Z[#103 + 2.0]   (加工前の待機位置)
  G1 Z#103 F150          (加工深さまで進む)
  G0 Z[#103 + 2.0]       (安全位置に戻る)
  #103 = #103 - #102     (次の深さを計算)
END1
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
- 深さの変数#103をループで更新しながら、段階的に加工を進めます。
- 加工前後の待機位置を設定することで安全性を確保します。
2. 汎用性を高める:ユーザー入力による自動化
特定の加工条件をユーザーが直接入力し、複数のワークに対応できる汎用的なプログラムを作成します。
サンプルプログラム:座標と深さを入力する例
#500 = 0.0  (X座標)
#501 = 0.0  (Y座標)
#502 = 0.0  (加工深さ)
(MACRO CALL)
POPUP["X座標を入力",#500]
POPUP["Y座標を入力",#501]
POPUP["加工深さを入力",#502]
G90 G0 X#500 Y#501 Z5.0 (指定位置に移動)
G1 Z#502 F100           (指定深さまで加工)
G0 Z5.0                 (退避)
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
- POPUP機能を使用することで、オペレーターが加工条件を簡単に入力できます(POPUPは機械によってサポートされない場合があります)。
- 汎用性の高いプログラムが実現できます。
3. トラブル対応を支援するマクロプログラム
加工中のエラーや寸法不良を自動的に記録し、再加工やエラー解析を支援する仕組みを組み込みます。
サンプルプログラム:エラー検知とログ記録
#300 = 0  (エラー検知フラグ)
#301 = 0  (再加工回数)
(IF加工エラー条件)
IF[#300 EQ 1] THEN
  #301 = #301 + 1        (再加工回数を増加)
  IF[#301 LE 3] THEN
    (再加工プログラム)
  ELSE
    POPUP["エラー発生: プログラムを終了"]
    M30
  ENDIF
ENDIF
(エラーが発生しない場合)
#300 = 0
M30
プログラムのポイント
- エラー検知フラグ#300を活用してエラーを管理します。
- 再加工可能な回数を制限し、安全停止を実現します。
4. 応用的なループと条件分岐の組み合わせ
多品種少量生産では、異なる部品を効率よく加工するための柔軟なプログラムが必要です。条件分岐や複雑なループを組み合わせて対応します。
サンプルプログラム:複数部品の一括加工
#600 = 1   (部品番号)
WHILE[#600 LE 3] DO1
  IF[#600 EQ 1] THEN
    (部品1の加工プログラム)
  ENDIF
  IF[#600 EQ 2] THEN
    (部品2の加工プログラム)
  ENDIF
  IF[#600 EQ 3] THEN
    (部品3の加工プログラム)
  ENDIF
  #600 = #600 + 1
END1
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
- 部品番号#600に応じて、加工プログラムを切り替えます。
- 部品数が増えても簡単に拡張可能です。
5. 高度な応用マクロの導入効果
- 複雑な工程の自動化
- 人間の介入を最小限にし、ミスのリスクを削減できます。
 
- 生産効率の向上
- 多品種対応や再加工の迅速化により、生産性が向上します。
 
- トレーサビリティの強化
- 加工中のエラーや条件を記録することで、品質管理や改善に役立ちます。
 
6. まとめ:自動化の未来へ向けて
これまでのシリーズを通じて、ファナックNCのマクロプログラムを活用した基本から応用までの自動化技術を学んできました。本記事で紹介したテクニックを活用することで、さらに効率的で柔軟な加工が可能になります。
次のステップとして、IoTやクラウド連携、AIを取り入れたスマートファクトリー化を検討するのも良いでしょう。
 
  
  
  
  
