今回は、ファナックNC搭載のマシニングセンターで使える便利なテクニックをご紹介します。テーマはズバリ、レニショウ主軸タッチプローブを活用した「内径真円加工の測定&再加工の自動補正マクロ」です。
マシニングセンター初心者でも理解しやすいように、実際の加工フローやマクロプログラムのポイントを丁寧に解説していきます。
■ そもそも「追い込み補正」ってなに?
加工した内径が、図面指示通りの寸法に収まっていない場合に行うのが「追い込み補正」です。例えば、加工した内径が 0.02mm大きい場合、この誤差を自動で検出し、再加工で補正することで寸法公差内に仕上げます。
従来の方法
- 内径を測定する
- 誤差を手計算して補正値を求める
- NCプログラムを修正して再加工
プローブ+マクロなら…
- 測定 → 誤差計算 → 補正 → 再加工まで自動化!
人の手間が減り、作業時間短縮&精度の安定化が図れます。
■ 測定から補正までの流れ
- 内径を加工する(通常のエンドミル加工)
- プローブで内径を測定する(真円度や直径をチェック)
- 誤差を自動計算する(許容公差外なら再加工へ)
- 補正量を反映して再加工する
■ サンプルマクロプログラム
では、実際に使えるマクロプログラムの例を見てみましょう。
今回は、Φ50H7公差(+0.021 / 0)の内径を加工する想定です。
① 変数設定(カスタム変数の定義)
#100 = 50.000 (目標内径:50.000mm)
#101 = 0.021 (上限公差:+0.021mm)
#102 = 0 (下限公差:0mm)
#103 = 0.01 (最小追い込み量:0.01mm)
- #100:ターゲット径
- #101 / #102:許容公差
- #103:微小な誤差を避けるための「最小加工量」
② 測定プログラム(プローブで内径測定)
G65 P9810 D50.0 S1 F100 (内径測定の実行)
#104 = #135 (測定結果:実際の内径寸法)
- P9810:レニショウの標準測定サイクル呼び出し
- D50.0:おおよその内径指定
- #135:測定結果が格納される変数
③ 誤差計算と判定
#105 = [#104 - #100] (誤差の計算:測定値 - 目標値)
IF [#105 LE #101] AND [#105 GE #102] GOTO 999 (公差内なら終了)
IF [ABS[#105] LT #103] GOTO 999 (誤差が小さすぎたら再加工しない)
- 誤差が許容公差内ならここでプログラム終了
- 誤差が小さすぎても「追い込み不要」と判断
④ 追い込み補正&再加工
#106 = [#105 / 2] (半径方向の補正量を計算)
G91 G41 D12 (工具補正ON、半径方向で補正)
G1 X#106 F200 (追い込み補正量分だけ再加工)
G40 (工具補正OFF)
G90 (絶対値指令へ復帰)
- #106で誤差の半分を再加工する(直径誤差のため半径方向)
- 再加工後、再び測定に戻ることも可能
⑤ プログラム終了
N999
M30
■ 実際の加工フローで考えると?
- 内径加工(エンドミルで加工)
- プローブ測定 → 誤差チェック
- 補正が必要?
- YES → 自動で再加工
- NO → 加工完了!
これをマクロで一括管理できるので、手動測定&手計算の手間がゼロになります!
■ ここがポイント!初心者向けアドバイス
- 測定前の工具退避を忘れずに! → プローブと干渉すると破損リスクあり
- 補正量は慎重に設定 → 過剰な追い込みは工具摩耗や精度低下の原因に
- 一度テスト加工で検証 → 新しいマクロは必ず空運転orテストワークで確認
■ まとめ
レニショウ主軸タッチプローブとマクロプログラムを活用すれば、高精度な内径加工の自動化が簡単に実現できます。
最初は難しく感じるかもしれませんが、プログラムの流れを理解すれば作業効率が大幅アップ!
「測定 → 計算 → 補正 → 再加工」の流れを自動化することで、安定した品質管理が可能です。ぜひ、現場で活用してみてください!