リード角の調整は加工現場で品質や効率を向上させる重要な手段ですが、適切に行わなければ、かえって問題を引き起こす可能性もあります。本記事では、加工現場でリード角変更を実施する際の具体的な手順と成功のためのポイントを解説します。
1. リード角変更を実施する目的を明確化
まず、リード角を変更する理由と目標を明確にします。
① 主な目的例
- バリの抑制:仕上げ加工での品質向上。
- 切削負荷の分散:工具寿命を延ばす。
- 加工時間の短縮:荒加工の効率化。
② ゴール設定
「バリの発生を50%減少」「工具寿命を30%延長」など、具体的な目標を設定することで、変更の成果を測定しやすくします。
2. 現状の加工条件を把握する
① 工具仕様の確認
- 使用しているエンドミルのリード角、刃数、材質、コーティングなどの仕様を確認します。
- 対象材料との相性もチェックします。
② 加工条件の記録
- 現在の切削速度、送り量、切り込み深さ、切削油剤の種類を記録。
- 現状での課題点(バリ、工具寿命、加工時間など)を整理。
③ 加工結果の分析
- 加工品の仕上がり状態を測定(寸法精度、表面粗さ、バリの発生状況)。
- 工具の摩耗状態を確認。
3. リード角変更の計画を立てる
① 適切なリード角の選定
加工材と目標に合わせて、リード角を以下の基準で選定します。
- 小さいリード角(5°~15°):荒加工や硬い材料の切削。
- 中程度のリード角(20°~30°):汎用加工。
- 大きいリード角(35°~45°):仕上げ加工や柔らかい材料の切削。
② 工具変更のタイミングを設定
加工ラインの稼働を止めることが難しい場合、工具変更を計画的に行い、段取り替えの時間を最小化します。
③ 条件変更のシミュレーション
可能であれば、CAMソフトやシミュレーションツールを用いて、リード角変更が切削負荷や加工結果に与える影響を予測します。
4. 実施ステップ
① 工具交換
新しいリード角を持つエンドミルに交換し、工具ホルダーや芯出しに問題がないか確認します。
② 試験加工
実際の加工品を使って試験加工を行い、以下を確認します。
- 加工精度(寸法や表面粗さ)。
- バリの発生状況。
- 切削負荷(加工音や振動も含む)。
③ 条件微調整
加工結果に基づき、切削速度、送り量、切り込み深さなどを微調整します。
- バリが多い場合:送り量を減らす、切削速度を上げる。
- 振動が発生する場合:切り込み深さを調整、工具剛性を確認。
5. 加工結果の評価と記録
① 工具寿命の確認
変更後の工具寿命を記録し、以前の工具と比較します。
② 加工品の測定
寸法精度や仕上げ面の粗さを測定し、目標と比較。
③ 成果の分析
- 目標(バリの減少、工具寿命延長など)が達成できているか評価。
- 改善点を整理し、次回の加工に反映。
6. トラブルシューティング
リード角変更後に問題が発生した場合、以下の原因と対策を検討します。
① バリが増加した場合
- 原因:リード角が大きすぎて、切削力が不足している。
- 対策:小さいリード角の工具に変更、切削速度を上げる。
② 工具寿命が短くなった場合
- 原因:リード角が小さすぎて刃先負担が増加。
- 対策:大きいリード角の工具に変更、切削油剤を変更。
③ 加工時間が増加した場合
- 原因:送り量が低すぎる、切削条件が保守的すぎる。
- 対策:送り量を増加、切削速度を上げる。
7. まとめ:リード角変更の成功ポイント
加工現場でのリード角変更を成功させるためには、事前の準備と計画、実施後の評価が欠かせません。具体的には以下のポイントを押さえましょう。
- 現状分析と目標設定を明確に行う。
- 加工材や目的に応じた適切なリード角を選定。
- 試験加工を通じて条件を最適化。
- 変更後の成果を記録し、次回の改善に活かす。
次回の記事では、**「リード角変更による加工品質のトラブルシューティング事例集」**をお届けします。現場での課題解決に役立つ情報をまとめますので、お楽しみに!