今回の記事では、加工後の寸法測定とNG判定、さらに再加工を自動的に実行するマクロプログラムを解説します。加工の品質を安定させると同時に、手作業の介入を減らすことができます。
1. 再加工とNG判定の必要性
加工現場では、寸法公差を満たさない部品が発生する場合があります。この問題を放置すると不良品が流出し、顧客の信頼を失うリスクがあります。
そのため、以下のような対応が求められます:
- 寸法測定による自動判定
- NG時の再加工プロセス
- 許容範囲を超えた場合のアラート表示や停止
2. プログラムの流れ
以下の流れでマクロプログラムを構成します:
- 加工を実行
- 寸法測定(主軸プローブ使用)
- 測定値と目標値を比較
- OK → 次の工程へ
- NG → 再加工または停止
- 必要に応じて補正値を更新
3. プログラム例
以下は、再加工とNG判定を組み込んだマクロプログラムの例です。
プログラム例:再加工とNG判定
#100 = 50.0 (目標寸法)
#101 = 0.05 (公差範囲 ±0.05)
#102 = 0 (再加工回数)
#103 = 3 (最大再加工回数)
N10
(加工実行)
G1 X10 Y10 Z-10 F500 (加工の例)
(寸法測定)
G65 P9810 Z1.0 (主軸プローブで寸法測定)
#104 = #[5003] (測定値を取得)
(公差判定)
#105 = [#104 - #100] (測定値と目標値の差を計算)
IF[ABS[#105] LE #101] THEN
GOTO 100 (公差内なら次工程へ進む)
ENDIF
(NG処理)
#102 = [#102 + 1] (再加工回数をカウント)
IF[#102 GE #103] THEN
#3000 = 1 (ERROR: 再加工回数オーバー) (最大再加工回数を超えた場合、アラートで停止)
ENDIF
(再加工プロセス)
#106 = [#[2001] + #105] (差分を工具長補正に反映)
G10 L10 P1 R[#106] (新しい補正値を設定)
GOTO N10 (再加工を実行)
N100
M30 (プログラム終了)
4. プログラムの解説
- 加工実行
- 最初にワークの加工を行います。ここでは単純な例として
G1
での加工を記載しています。
- 最初にワークの加工を行います。ここでは単純な例として
- 寸法測定
- 主軸プローブを用いて加工後の寸法を測定します。測定値はシステム変数
#5003
に格納されます。
- 主軸プローブを用いて加工後の寸法を測定します。測定値はシステム変数
- 公差判定
- 測定値と目標寸法の差分を計算し、許容範囲内(±#101)かを判定します。
- NG処理
- 許容範囲外の場合、再加工を行います。再加工時には工具長補正の値を更新します。
- 再加工回数が設定した上限(#103)を超えるとプログラムを停止し、エラーを表示します。
- 再加工
- 工具補正値を更新した後、再加工を繰り返します。許容範囲内に収まるまでこのループが実行されます。
5. 応用例
再加工やNG判定プログラムを以下の場面でも応用できます:
- 複数箇所の測定と補正
- 測定点ごとに許容範囲を設定し、加工ごとに補正を行う。
- 加工条件の自動最適化
- 初回のNGが多い場合、工具データや切削条件を動的に変更する。
- リアルタイムモニタリングとの連携
- 加工機にセンサーを搭載し、異常を即時検知してプログラムに反映。
6. デバッグのポイント
プログラムを作成した後、以下を重点的にチェックしてください:
- 変数の初期化
- 未使用の変数や誤った初期値がエラーの原因になることを防ぎます。
- 測定値の精度確認
- 主軸プローブのキャリブレーションが正確に行われているかを確認。
- エラーハンドリング
- 再加工回数を超えた場合の動作やアラートを明確に設定します。
次回予告
次回は、シリーズの最終回として「加工時間の短縮と効率化を目指す高度なマクロプログラム」を紹介します。簡単なパラメータ変更で様々な加工に対応する方法や、自動化をさらに推進する応用例をお届けします。
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