エンドミルのリード角を変更することで加工品質が向上する一方、それが加工コストや生産性にどのような影響を及ぼすかについて考える必要があります。本記事では、リード角の選定がコストに与える影響と、効率的な加工のためのポイントについて解説します。
1. リード角と加工効率の関係
リード角の変更により、切削条件や加工結果に影響を及ぼします。この調整が生産性や加工コストにどう関わるのかを見ていきましょう。
① 小さいリード角の影響
- 加工効率:切削力が一点に集中するため、切り込みが深くなり荒加工には向くが、工具寿命が短くなることが多い。
- コストへの影響:
- 工具交換頻度の増加によりランニングコストが上昇。
- 高剛性工具が必要になるため、初期投資がやや高くなる。
② 大きいリード角の影響
- 加工効率:切削力が分散され、工具負荷が軽減することで工具寿命が延びる。仕上げ加工には適しているが、加工時間が長くなる傾向がある。
- コストへの影響:
- 工具寿命の延長でコスト削減が期待できる。
- 高精度が求められる場合、加工時間が増加し、生産性が低下することも。
2. リード角が加工コストに与える具体的な影響
リード角の変更が直接的または間接的に加工コストに影響を与える要因をいくつか挙げます。
① 工具寿命とコストの関係
- 小さいリード角では刃先に集中する応力が大きく、摩耗が早く進行。
- 大きいリード角では応力が分散され、刃先の負担が軽減されることで工具寿命が延びる。
② 加工時間とコストの関係
- 大きいリード角は切削抵抗が減少し滑らかな加工が可能だが、1回の切り込み深さが浅くなるため加工時間が延びる。
- 加工時間の増加に伴い、稼働率が下がり生産性が低下するリスクがある。
③ 不良率とコストの関係
- 小さいリード角は切削の安定性が向上し、荒加工では不良率が低下。
- 大きいリード角は仕上げ加工でのバリや寸法不良のリスクが軽減し、再加工コストを削減。
3. 効率的なリード角選定のポイント
加工コストを最小限に抑えつつ、品質を維持するためには、以下のポイントを押さえてリード角を選定します。
① 加工材と用途に基づく選定
- 硬い材料や荒加工には、小さいリード角(5°~15°)を選択。
- 柔らかい材料や仕上げ加工には、大きいリード角(30°以上)を採用。
② 工具寿命を意識した条件設定
- 工具寿命を延ばすため、リード角だけでなく切削速度や送り量も最適化。
- 特に大きいリード角では切り込み量を減らし、刃先摩耗を防ぐ。
③ 加工プロセス全体の最適化
- 荒加工と仕上げ加工で異なるリード角の工具を使い分ける。
- 加工順序を工夫し、不必要な工具交換や段取り替えを削減。
4. リード角調整によるコスト削減の実例
以下は、リード角を調整して加工コスト削減に成功した例です。
事例1:ステンレス鋼の荒加工
- 変更前:大きいリード角の工具を使用し、切り込み深さが浅いため加工時間が長かった。
- 変更後:小さいリード角(10°)の工具を採用し、切り込み深さを増加。
- 結果:加工時間を20%短縮し、コスト削減に成功。
事例2:アルミ合金の仕上げ加工
- 変更前:小さいリード角で仕上げ加工を行ったため、バリ除去に手間がかかっていた。
- 変更後:大きいリード角(45°)の工具に変更。
- 結果:加工精度が向上し、バリ除去工程が不要に。
5. まとめ:加工目的に応じたリード角選定でコストを抑える
リード角の変更は、工具寿命、加工時間、不良率といった様々な要因に影響を与えます。そのため、加工材や目的に応じたリード角の選定が重要です。また、効率的な加工プロセスを設計し、全体最適を目指すことで加工コストを大幅に削減できます。
次回の記事では、**「加工現場でのリード角変更の実践手順」**について詳しく解説します。リード角調整を現場で効果的に活用するための具体的なステップを紹介しますので、ぜひご覧ください!