これまでのシリーズでは、基本的なマクロプログラムの使い方から実践例まで解説してきました。第6回では、さらに自動化を進めるための応用的なマクロを紹介します。これにより、複雑な加工シナリオや多品種少量生産への対応力を向上させます。
1. 応用マクロの概要
応用マクロでは、条件分岐や繰り返し処理を活用し、加工の効率化を図ります。以下のような場面で威力を発揮します:
- 複数ワークの一括加工。
- 加工結果に応じた再加工やNG判定。
- 加工条件の自動調整(例:材料の厚みによる深さ変更)。
2. 応用例1:複数ワークの自動加工
複数のワークを一度に加工する場合、毎回プログラムを作成するのではなく、位置と回数を設定するだけで自動的に加工できるマクロを作成します。
サンプルプログラム
#100 = 3 (ワークの列数)
#101 = 2 (ワークの行数)
#102 = 100.0 (列間ピッチ)
#103 = 80.0 (行間ピッチ)
#104 = 1 (現在の列位置)
#105 = 1 (現在の行位置)
WHILE[#105 LE #101] DO1
WHILE[#104 LE #100] DO2
G90 G0 X[#104 * #102] Y[#105 * #103] (ワーク位置へ移動)
(加工プログラムをここに記述)
#104 = #104 + 1
END2
#104 = 1
#105 = #105 + 1
END1
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
- 外側のループで行、内側のループで列を処理します。
- 加工位置は、列数と行数に基づき計算されます。
3. 応用例2:加工後の自動NG判定と再加工
加工後に測定結果を判定し、許容範囲外の場合は再加工を行うマクロを作成します。
サンプルプログラム
#200 = 50.0 (目標寸法)
#201 = 0.1 (許容公差)
#202 = 49.8 (加工後の測定値)
#203 = 0 (再加工回数)
IF[[#202 LT [#200 - #201]] OR [#202 GT [#200 + #201]]] THEN
#203 = #203 + 1
IF[#203 LE 3] THEN
(再加工プログラムをここに記述)
ELSE
#300 = 1 (NGフラグ)
ENDIF
ENDIF
IF[#300 EQ 1] THEN
#300 = 0
M0 (加工停止)
ENDIF
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
#200
と#201
で目標寸法と許容公差を設定します。- 測定結果
#202
が許容範囲外の場合、再加工を実行します。 - 再加工回数は
#203
で管理し、上限を超えた場合はNGフラグを設定して停止します。
4. 応用例3:材料厚みに応じた自動加工深さ設定
材料の厚みが異なる場合でも、プログラムを修正せず自動的に深さを調整します。
サンプルプログラム
#400 = 20.0 (材料厚み)
#401 = 5.0 (切削余裕)
#402 = -[#400 - #401] (加工深さ計算)
G90 G0 X0 Y0
G43 H1 Z5.0
G1 Z#402 F100 (計算された深さへ加工)
G0 Z5.0
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
- 材料厚み
#400
に基づいて加工深さ#402
を計算します。 - 材料が変わっても、厚みの値を更新するだけで対応可能です。
5. 応用例4:段取り時間の短縮マクロ
段取り時に、各治具やワーク位置を確認し、簡単に座標を設定できるマクロを作成します。
サンプルプログラム
#500 = 10.0 (基準位置X)
#501 = 15.0 (基準位置Y)
G90 G54 X[#500] Y[#501] (基準位置確認)
M0 (作業者が確認)
#502 = 100.0 (新基準位置X)
#503 = 80.0 (新基準位置Y)
G10 L2 P1 X[#502] Y[#503] (新基準位置を登録)
M30 (プログラム終了)
プログラムのポイント
G10
コマンドを使用して座標系を設定します。- 作業者が確認後に変更を適用します。
6. 応用マクロの導入効果
- 効率化
- 一括加工や自動再加工により作業時間を短縮できます。
- 柔軟性向上
- 材料の厚みやワーク数の変更に柔軟に対応可能。
- エラー防止
- NG判定や段取り確認を通じてミスを未然に防げます。
7. まとめ
応用マクロを活用することで、自動化の幅が広がり、現場の生産性向上につながります。本記事で紹介したプログラムを基に、さらに高度な機能を追加してみてください。次回からも、実践的なプログラム例をお届けします!