エンドミルを使用したヘリカル穴あけ加工は、穴あけ専用工具を使わずに広い径の穴を加工する便利な方法です。本記事では、簡単にカスタマイズできるヘリカル穴あけマクロのサンプルプログラムと、その活用方法を解説します。
1. ヘリカル穴あけ加工とは
ヘリカル穴あけ加工とは、エンドミルを螺旋状に動かしながら深さ方向に進めることで、穴を開ける加工方法です。この方法には以下の利点があります:
- コスト削減:専用のドリルやホルダーが不要。
- 柔軟性:エンドミルの直径と設定次第で、様々な穴径に対応可能。
- 高精度:円弧補間を利用するため、精密な円形の穴が加工可能。
2. ヘリカル穴あけマクロの概要
このマクロプログラムでは、以下のパラメータを指定することで加工を行います:
- #100: 穴の中心X座標
- #101: 穴の中心Y座標
- #102: 穴の直径
- #103: 穴の深さ
- #104: 1周あたりのZ方向進み量
- #105: フィードレート
3. サンプルプログラム
以下はヘリカル穴あけマクロの例です。
#100 = 50.0 (穴の中心X座標)
#101 = 50.0 (穴の中心Y座標)
#102 = 20.0 (穴の直径)
#103 = -15.0 (穴の深さ)
#104 = 1.0 (1周あたりのZ方向進み量)
#105 = 500 (送り速度)
#110 = 2.0 (エンドミル直径)
#111 = [#102 / 2] (半径計算)
#112 = [#111 - #110 / 2] (ヘリカル半径)
G17 G90 (XY平面選択、絶対指令)
N10
G0 X[#100] Y[#101] Z2.0 (穴の中心へ移動)
G1 Z0.0 F#105 (Z方向の初期位置)
WHILE[#103 < 0] DO1
G3 I[#112] Z[#103] F#105 (ヘリカル動作)
#103 = [#103 + #104] (次の深さ)
END1
G0 Z2.0 (退避)
M30 (プログラム終了)
4. プログラムの解説
- 基本設定
#100
~#105
で穴の位置や加工条件を設定します。#110
にはエンドミルの直径を設定します。
- 円弧補間
G3
コマンドで反時計回りの円弧を描きながらZ方向に進みます。I[#112]
は穴の中心から円周までの距離を指定しています。
- 深さ方向の制御
WHILE
ループで1周ごとに設定された深さ分(#104
)だけZ方向に進みます。
5. 利用方法
このマクロプログラムは、多くの加工条件で応用が可能です。以下は、実際に使用する際のポイントです:
- エンドミルの選定
- 切削材に適したエンドミルを選びます。通常、剛性の高い工具が望ましいです。
- 送り速度の調整
- 使用する素材や工具の条件に合わせて、
#105
のフィードレートを調整します。
- 使用する素材や工具の条件に合わせて、
- テスト加工の実施
- 実機で加工する前にエアカットを行い、動作を確認します。
- 加工径の変更
#102
の値を変更するだけで、異なる直径の穴に対応できます。
6. 応用例:傾斜面へのヘリカル加工
傾斜面の上にヘリカル加工を行う場合、開始位置でのZ方向の補正が必要です。以下はその例です:
#120 = 10.0 (傾斜面の高さ補正)
G0 X[#100] Y[#101] Z[#120] (開始位置補正)
7. 加工現場での効果
- 工具寿命の延長
- ヘリカル動作により切削負荷が分散し、工具寿命が向上します。
- 高精度加工
- 円弧補間を利用するため、従来のドリル加工よりも高い寸法精度が得られます。
- 多目的対応
- エンドミルを使うため、穴あけ加工以外にも対応可能です。
8. まとめ
エンドミルを使用したヘリカル穴あけマクロは、加工コスト削減や柔軟性向上に大いに役立つツールです。本記事のサンプルプログラムを参考に、加工現場で活用してみてください。また、現場に応じたカスタマイズを加えることで、さらに効率的な運用が可能となります。