はじめに
アルミニウムは軽量で加工しやすく、航空機や建築資材、食品容器など幅広い分野で使用されています。しかし、アルミニウムも腐食に完全に無縁ではありません。特に塩分やアルカリ環境では腐食リスクが高まります。本記事では、アルミニウムの腐食特性と防錆技術について解説します。
1. アルミニウムの腐食の特性
1-1. 自然酸化膜の役割と限界
アルミニウムは表面に酸化アルミニウム(Al₂O₃)を形成し、腐食から保護されています。ただし、この酸化膜は以下の条件下で損傷し、腐食が進むことがあります:
- 塩分濃度の高い環境(海水など)
- 強酸性または強アルカリ性の液体との接触
- 異種金属との接触(ガルバニック腐食)
1-2. 腐食の主な種類
- すきま腐食: 密閉空間に液体が溜まり、局所的に腐食が進行。
- 孔食(ピッティング): 表面に小さな穴が生じる腐食。
- 白錆(白色腐食): 塩分を含む環境で生じる腐食生成物。
2. アルミニウムの錆除去方法
2-1. 化学処理
- アルカリ洗浄: 酸化被膜や腐食生成物を除去するために、弱アルカリ性の洗浄剤を使用。
- 酸性洗浄: 希硝酸やリン酸溶液を用いて酸化膜を再形成。
2-2. 機械的処理
- ブラスト処理: ガラスビーズや酸化アルミニウムを用いた表面処理。軽度の錆を除去します。
- ポリッシング: 磨き作業で錆を取り除き、表面を平滑化。
2-3. 電解処理
- 陽極酸化処理(アルマイト): 表面に厚い酸化膜を形成し、耐腐食性を向上。特に装飾用途や食品分野で使用されます。
3. 腐食防止のポイント
3-1. 表面処理の徹底
- 陽極酸化処理(アルマイト): 耐食性だけでなく、耐摩耗性や美観も向上。
- フッ素樹脂コーティング: 耐薬品性を強化。
3-2. 異種金属との接触防止
ガルバニック腐食を防ぐため、異種金属の間に絶縁材を挿入します。
3-3. 使用環境の管理
塩分の多い環境では定期的な洗浄を行い、腐食リスクを低減。さらに、アルミニウムに適した保護剤の塗布が効果的です。
3-4. 腐食耐性の高い合金の選定
腐食環境に応じて、耐食性の高い6000系や7000系アルミ合金を選択します。
4. 現場での実践例
- 海洋構造物: アルマイト処理を施したアルミニウム製部材を使用し、塩害による腐食を低減。
- 食品産業: アルマイト処理により衛生面と耐食性を両立した調理器具や包装材。
- 航空機部品: 7000系アルミ合金を採用し、軽量化と耐腐食性を実現。
5. 次回予告
次回は「銅と真鍮の腐食対策 – 電気機器や装飾品を守る秘訣」をテーマにお届けします。
まとめ:アルミニウムの特性を理解して腐食を防ぐ
アルミニウムは軽量かつ優れた耐食性を持つ金属ですが、特定の環境では腐食リスクがあります。適切な表面処理や環境管理、材料選定により、アルミニウムの性能を最大限に活用できます。