5軸加工機で加工を始めたばかりの方にとって、**3次元座標変換(G68.2)**は難しく感じるかもしれません。しかし、この機能を理解すると、複雑な形状の加工が効率よく行えるようになります。この記事では、ファナックNCのG68.2を初心者向けに分かりやすく解説し、基本的な使い方や実際のプログラム例を紹介します。
1. 3次元座標変換(G68.2)とは?
**3次元座標変換(G68.2)**は、加工する座標系を任意の角度に回転させるための命令です。
これを使用することで、以下のような加工が可能になります:
- 傾斜面や斜め方向の加工
- 回転軸を使った複雑な位置決め
通常、5軸機はA軸やB軸でワークを傾けますが、G68.2を使用することで、プログラム座標をワークに合わせて回転させることができます。これにより、複雑な計算をしなくても、簡単に加工が行えます。
2. G68.2の基本構文
G68.2の基本的な構文は次のとおりです:
G68.2 Xx Yy Zz Iα Jβ Kγ
各項目の意味
- Xx, Yy, Zz:回転の基準点(座標系の回転中心)
- Iα, Jβ, Kγ:回転角度
- Iα:X軸に対する回転角度(°)
- Jβ:Y軸に対する回転角度(°)
- Kγ:Z軸に対する回転角度(°)
これを入力すると、座標系が指定された基準点を中心に回転し、新しい座標系が適用されます。
3. 使用例:傾斜面への加工
傾斜した面に穴を加工するシンプルな例を見てみましょう。
加工の条件
- 傾斜面の角度:X軸方向に30°傾斜
- 加工位置:基準点を中心に10mm移動
プログラム例
N10 G90 G17 G21 (絶対座標、XY平面、ミリ単位)
N20 G68.2 X0.0 Y0.0 Z0.0 I30.0 J0.0 K0.0 (座標系をX軸方向に30°回転)
N30 G43 H1 Z10.0 (工具長補正を適用)
N40 G81 X10.0 Y0.0 Z-5.0 R1.0 F200 (穴あけ加工)
N50 G69 (座標系の回転を解除)
N60 M30 (プログラム終了)
プログラムの解説
- N20:基準点を中心に座標系をX軸方向に30°回転(G68.2)。
- N40:回転後の座標系で穴あけ加工を実行(G81)。
- N50:座標系の回転を解除(G69)。
4. G68.2のメリットと注意点
メリット
- 複雑な計算が不要:傾斜面や曲面加工の際、加工位置を直接指定可能。
- プログラムの簡略化:座標変換によって、ワーク座標をそのまま利用可能。
- 高い加工精度:座標変換によって機械誤差を最小限に抑えられる。
注意点
- 基準点の設定ミス:X, Y, Zの基準点が正しく設定されていないと加工がずれる。
- 回転後の座標系確認:G68.2を使用した際、シミュレーションで動作確認を行う。
- 回転解除(G69)の忘れ:G68.2を解除しないと、以降の加工が誤った座標系で実行される。
5. 学習に役立つポイント
- 実機での動作確認
- シンプルな形状でG68.2とG69を試して、動作を確認します。
- シミュレーション活用
- CAMソフトや機械のシミュレーション機能で座標系の動きを確認。
- 小さなステップから学ぶ
- 最初はX軸またはY軸の単一回転から始め、複合回転を試します。
まとめ
5軸加工機でのG68.2(3次元座標変換)は、初心者にとって難しく感じるかもしれませんが、使いこなせば複雑な加工を効率的に行える強力なツールです。
初心者の方は、まず基本的な構文とシンプルな使用例から始めてみてください。慣れてきたら、複雑な回転や加工にも挑戦してみましょう!